テレビ東京の「カンブリア宮殿」を見た。
今日のゲストは森ビルの社長、森稔氏であった。
森氏は再開発事業に関して「街を作っている」と言う。
この言葉を聞いたらこの番組を最後まで見ないわけにはいかない。
森氏の言う「街」とは何なのだろう、と言う疑問に答えてくれることを期待して見た。
再開発と言うとその土地に住んでいる住民から土地を買い上げて売れるビルなどを建築して転売するか、賃貸に出すと言うイメージがある。司会の村上龍も言っていたが、その通りのイメージである。
森ビルはそれに対して「街づくり」と言う。
戸建の家を上空に積み上げて密度を高くし、余ったところに緑地、診療所その他生活スペースと仕事場となるオフィスビルを建築する。職住近接した街となる。
ここまで聞くと必然的に思い出すものは、やはりあの人のあれだ。
ル・コルビュジエのヴォワザン計画である。概略、言っていることは同じである。ヴォワザン計画の場合は国が行う前提であるので規模は何倍も大きい。森ビルの場合はあくまでも一企業の行うものであるから規模はせいぜい六本木ヒルズまでである。しかし小さなパリ計画には違いない。ル・コルビュジエと似ているからと言うわけではないが、一理あると言わざるを得ない。
しかし、次の言葉には疑問を感じる。
村上龍「新橋のガード下の屋台でモツ鍋を食え。」に対して、
森稔「路地裏で酒飲んでるのは日本人だけですよ。」
つまり、日本人はそろそろもっと別の楽しみを探すべきであって、何時までもノスタルジーに浸っていてはいけないと言うことなのである。
そう、確かに世界を見ればこんなにだらしなく街で酔っ払っているのは日本人だけだ。その点は自分も外国を見ているので実感するものがある。それに東京に流れる時間は他の都市に比べて遥かに遅い。日本のビジネスマンは安穏としている。だから「いつまでそんな事しているんだ」と言いたい気持ちもよくわかる。
ただ、今それを一掃して東京を全て六本木ヒルズにしてしまったら、それで東京は楽しい街になるのだろうか。戦後や高度成長期からのいい加減な伝統らしきものでであっても、それはもう古いと言えるのは、あまりにも楽天的で成長や進歩や効率礼賛ではないのか。時間軸の進行方向には価値があってその反対には何の価値も無いとする一方向的な考え方である。
六本木ヒルズに赤提灯は無い。でもシャレたレストランはある。 1粒200円もするショコラティエが作るチョコレートショップはあるが駄菓子屋は無さそうだ。こう見ると何でもあるが皆ちゃんとしていて、全部検索可能なほどである。街によくあるいい加減な個人商売の店らしきものは一つも無いようだ。全ての部分が固定した機能を持ち過不足の無い環境を作り出している。
確かに六本木ヒルズは機能的には街かもしれないが、そのいい加減で中途半端でないところが逆に街のようではない。ル・コルビュジエの時代の近代都市計画が批判されたのは、街の成り立ちを無視した機能重視主義であり過ぎた事によるが、森ビルもまさにそうではないだろうか。人間重視をうたいながら機能重視主義となってしまうのは、計画者が神の視点から街を見ている事によるのではないだろうか。それは理想を実現することのできる者が考える街であって実際にそこに住む名も無き人々が考えた街ではないからだろう。
であれば、さて、建築家はどちらに近い人間として振舞うべきだろう。
16 件のコメント:
私も たまたま見ました
森という男に 嫌悪感 憎悪感 危機感を抱きました。
何様だ!
私は 建築以前にこの人間の人格に問題があると考える。
都市全部を自分の店子にするつもりか。
森ビルの!
耐震を建前にしていたが、高層建築はいまだかつて巨大地震を経験せず耐震に確信はもてないとついさっき勉強したばかりだ。
論理が通らない。
つまりそれは詭弁に過ぎない。
東京という公共物を 自分の商売のために私物化しようとするたくらみを そのような陳腐な詭弁で通せると思える老人の頭の中。
正気の沙汰ではない。
都市政策 政治がこうした人間の献金で動いていくとしたら それはますます「人間」の住めない都市をもたらすに違いない。
これは建築問題ではなく 民主政治の危機だと思う。
民主主義が姑息な老人の商業主義にとってかえられようとしている。
私はこんなふざけた人間とは徹底的に闘う。
言論で。
マンキー
どちらに近いといわれると、
建築家はコルビジェに近い人間として振舞った方がいいんではないでしょうか。
コルビジェは住む人のことを考えて
計画したけれど、結果的に受け入れられなかった。
でも受け入れられ絶賛されたものも多いですよね。
orang-u+aさんはどう思われますか?
マンキーさんなら六本木ヒルズあたりの土地をどうしたと思いますか?それとも放っておきますか?
太郎さんはいかがですか?
もし私だったら.....
全部作らないで途中で止めるってのはどうでしょう。マンションも床まで作って後は住む人が大工さんを呼んで勝手に作る。一つのマンションなのに壁面の材質も色もバラバラ。広さもバラバラ。一つのビルに事務所も住居も商店も病院もバラバラに入る。サラ金や立ち飲み屋まであったりしたらどうでしょう???
ル・コルビュジエも森稔もその志を私は評価しています。とても良心的ですから。しかしちょっと気になるのは、もし自分がそこに住むとしたら、自分の住居に対して自分の決定権がそれほど大きくはないかもしれないと感じるのです。(私はあそこを買えるほどお金ありませんが。)
私がル・コルビュジエほど天才でも森氏ほど自信もお金も無いからそう思うのでしょうか?
でもクライアントが建築家に依頼する時は「ちゃんと壁まで作ってくれ」って言うでしょうねえ。
私だったら、
現在の六本木ヒルズと同じようなコンセプトで、デザインは違う形にします。
時が経っても、そこへ住みたいと思うような建物にしたいです。
デザイン、機能、安全性において充実させたものにします。
そして、私は完成した状態で提供します。
未完成のまま提供すると、
各個人が別々の趣旨で作るので統一性のない
美しくないものが出来てしまうような気がするのです。
もしかして面白いものが出来るかもしれませんが、その確立は低いと思います。
自分で造りたい人は、六本木ヒルズではなく
別の場所を求めると思います。
こんにちは
私はこの問題については、前提として、住民個々人の意思を尊重しますね。
すなわち 開発されたくないという人の意思は最大限尊重します。
もちろん、少数者の横暴も許されないから、大まかには多数決で。
なぜなら それが自由主義国家の大前提だと思うからです。
いいかえるなら、無理にどけてまで、それがいかによかろうものか分からんが、そんなものを無理強いするのだけは断固として戦います。
仮に住民個人の意思が整って、開発となったばあいは、できるだけ多くの選択肢を与えますね。
与え方については、オラングさんの与え方はウィットに富んでいると思います。
現実的には、個人的能力の点で無理な方のフォローとして、できる限り提案するということですね。
高層集合住宅ということなら 総体 すなわち全体のデザインを考えることは避けて通れないと思います。
この点については、伝統そして環境を重んじるマンキーといたしましては、どうしても我が国日本を感じさせ、かつ環境に最大限配慮した、否むしろ世界に類を見ない新しい環境技術を盛り込んだ建物を建てますね。
いわばこれからの日本 これからの世界を引っぱれるフラッグシップのような建物にしたいですね。
具体的なデザインまではまだ考えていませんがとりあえずコンセプトはそんな感じです。
上海に建つ森ビルのデザインコンセプトは 日本刀だとか聞いたことがあります
たしかに斬新で 正直カッコイイと思うのです。
しかし その反面 過去の歴史を振り返った時に 南京大虐殺で振りかざされたであろう 度外道どもの 日本刀を想起させもするデザインに デリカシーのなさを感じざるを得ない。
以前三菱地所かどっかが、アメリカのロックフェラーセンターを買って アメリカ人の反感を買っていましたが、上海のビルについても おそらく同様の感情を持つ現地人は皆無とはいえないと思います。
日本人は 茶道を楽しみ 武道を極めてきた繊細かつ魂のある民族なのに 戦争やこうした軽薄な行為も行う 本当に不思議な生物だと思います。
どんなに金があっても 地位があっても、センシティブネス 礼儀 節度をわきまえない 自称東京人は 唾棄に値する愚か者だと思います。
私はそうならないためにも ASUなどを通じて知性を磨くことができればと思っています。
マンキー
センシティブネス→センシティビティ 訂正
マンキー
お二人ともコメント早いなあ。
太郎さん、そうですよね、未完成のままであればスラムと似たような状態になりかねない。
そう考えると東京って完全な都市計画って無いですからデベロッパや地主が勝手にいろいろ建てては壊してる壮大なスラムかもしれませんね。東京は快適で美しい都市ではないですね。
マンキーさん
>全体のデザインを考えることは避けて通れない
そうですね。でも、六本木に集まる多様な人種に対応するのは難しくありませんか? 安藤忠雄なら難しく考えないかもしれませんね。
今思いついたんですけど、こう言う話題で仮想コンペやったら面白いんじゃないでしょうか。
現実にある有名建築家の建てたものを題材に、自分だったらこうすると言うコンペです。時間かけてやってもどうせ造られる見込みは無いのでアイデアスケッチと簡単な説明だけのオープンなコンペをするのです。
よしどこかでやろう!
コンペ面白そうですね。
しかし私は名古屋なので参加出来ないかもしれません。
地方の私から見ると、
東京は斬新で面白いものが沢山あり大好きな街です。
しかし住みにくい街なのかもしれませんね。
人が集まってくるということは、
魅力のある街だと言う事ですよね。
美しい=魅力がある
ではないんですね。
コンペはもちろんネット上でのことですよ。だって、実際にこんなことで集まっていたらたいへんですから。
名古屋の人から見て東京ってどんな魅力があると感じますか?
ネット上で、ですか。
それは怖いですね。
ネット上だと辛辣な批判を受けそうです。
その代わりお世辞ではなく本音も聞けるから面白そうですが。
東京の魅力は人、物が多いことですね。
集客力があるから、新しい建物や高層ビルも沢山出来るんでしょうね。
たしかに カオスはアジアの魅力であるということは否めないと思います
マンキー
こうしてネットコンペをしていくことは お互いが研鑽する上で いいアイデアだと思います
オラングさんは 別にお世辞でいうわけではないが 面白いアイデアの持ち主だと思います。
太郎さんがおっしゃるように 本音を闘わせる楽しさは ネットのよいところだと思います
プラス方向でいけるように 他にもいろんな人が意見を述べてくれたらいいですね。
マンキー
私もorang-u+aさんは本当に天才だと思います。尊敬しています。
マンキーさんもよく勉強していらっしゃる。言論もはっきりしているし、尊敬します。
建築とは関係ないコメントですみません。
聞いた話ですが、
目標を達成するには一緒にやる人がいないと出来ないそうです。
共に頑張っていきたいです。
このような場を設けていただき
orang-u+aさんありがとうございます!
ちゃかさないでくださいよ。
皆に笑われますから。
一緒にがんばりましょう。
頑張りましょう
マンキー
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