2010/01/10

中国様式モスク


ニュースによれば、マレーシアのスランゴール州3箇所に中国様式のモスクが建造されることになった。デザインは古代中国様式とイスラム様式をミックスしたものとなっている。建設地はペラ、マラッカ、ラワン。モスクは一定の時刻にアザーンをスピーカーで周辺地域に流すが、これもマレー語と中国語で行われる。新聞ではこの建設の目的を華人社会(中国系住民)にイスラムの教えを理解して欲しいこと、イスラムが他の宗教に対しても寛容であることを示したいためと書かれているが、数少ない中華系ムスリムのコミュニティ等がこれに関与しているのかどうかは書かれていない。

モスクと言えば建築史の教科書にいくらか出てくるがそれらの多くはタマネギ型のドームを持つものだ。しかし実際にはイスラム様式と言うのは定義があいまいで、中国にあるモスクのほとんどは仏教寺院と区別が付きにくい。また東南アジア、インドネシアなどにあるモスクも三角屋根のものが多く一見してそれがモスクかどうかは分かりにくい。形の無いモスクと言うのもある。例えば日本では空中店舗方式のものもあって単にビルを一部間借りしている部屋である場合だってある。

そう考えるとこの中国風モスク建設と言うのはかなり恣意的で、はっきりした目的の記号として建設されると解釈される。もちろんそれは新聞に書かれている通りだろうが、それはモスクの本来の目的とは多少違うことになるだろう。


逆にもっと根本的な問いとして、モスクとは何かと言う疑問もある。
それに関しては、以前、KLのイスラミック・ミュージアムでドイツのモスク建築を展示していた中の一文が興味深い。

それによれば、ムスリムの祈りはどこで行う事も可とされ、ほとんどの場合それは1人で行われる。特に規定はされていない。中には他宗教のように神を象徴するイコンがあるわけでもなくガランとしていて特に何もない。ではなぜモスクが建設されるのか、これは当のムスリムにとっても基本的な問題なのだそうだ。結論は祈りの象徴であったりコミュニティ形成の場であったりと言う割合一般的に考えられる結論となる。

そのようなわけで、モスクの"様式"と言うのも怪しい。教科書ではモスクと時代の建築様式が結び付けられて書かれていて誤解を招くのだが、それは時代の様式なのかモスクの様式なのかよく考えてみる必要があるだろう。

新生中国様式モスクは2年以内に完成と言うことなので完成後には見に行ってみたい。