2007/11/09

「近隣住区論」 クラレンス・A・ペリー

都市計画学を勉強している。


クラレンス・A・ペリーのはそれほど難しい理論ではない。

行政区画(県、市、区といったもの)とは異なる小さなコミュニティと言うものが自然発生することに目をつけ、これを新しい街づくりに応用しようとする研究である。


(以下、「近隣住区論」の完全な要約ではない事に注意。)

原則として以下がある。

1.規模:適正な規模はどの程度であるか。
2.境界:規模と関係するもので、研究の主題が主に自動車を使用して移動する郊外の居住区であるために、近隣住区の外側は幹線道路で区切られることを前提としている。
3.オープンスペース:公園とレクリェーションのための空間の広さと位置について言及している。
4.店舗:店舗等の業務区域が徒歩で行ける範囲に必要である。もちろん自動車で移動する人たちを前提とするが、タバコや食料を買う程度は区域内でまかなう必要がある。
5.地区内街路体系:地区内を安全快適に移動するために通過車両を排除するなど。

この原則を適用した近隣住区による「新たなコミュニティ」を作り快適な生活を作り出そうと言うものである。



近隣住区には前提条件となる考え方がある。

1.育児期にある家庭の環境への要求を前提として考えている。
独身世帯はコミュニティのようなものよりも独立した周囲に干渉されない環境を好み、流動的であるが、結婚して育児期になるとそれ以前よりもはるかに多くを周辺環境に求めるようになる。また、子供が独立して夫婦2人の世帯になるとまた要求は変り、より独身時代に近くなる。現代はその時期の要求に合わせて住居を選ぶことができる。

2.居住地コミュニティが占める広さは、学校、運動場、その他の店舗サービスが効率良く運用される広さと完全に一致する。(調査より)よって、これらを一つに区分してまとめる事が可能と言う考え方に基づく。

3.近隣住区による新たなコミュニティは農村のコミュニティとは異なるものを意味する。職住分離によって現代社会にはコミュニティが消失しているが、これを回復することを目的としているが、あくまでも新しい形のコミュニティを提案するものである。



適正な広さ
子供が小学校まで徒歩で通う距離は1/2フィート(400)程度、約400~500m程度であり、他のサービスも同程度である事が分かっているので、小学校を中央に配置し、そこから半径400~500mの範囲である。
同じく地域コミュニティ施設は中央に配置するが、小学校の建物が兼ねてもよい。

公園とレクリェーション施設の配置
小学校の校庭が子供のための公園を兼ねることもできるが、概ね地区面積の10%が必要なのでこれを校庭でまかなうと広くなりすぎる。また、子供が遊びに出る距離は1/4フィート(200m)程度であるので公園を分散して配置する。

商業施設配置
商業施設は住居から見えない位置にまとめる。また隣の近隣住区の商業施設と向かい合うように配置することで一体化させる。住区の隅部となる。


日本にては既存の居住地域にこれを全て適用する事は不可能であると考えられるが、小学校やコミュニティ施設の配置を決定するなど、部分的には使用できる可能性はあるだろう。しかし、日本では家を流動的な資産と見なせない場合もあり、また都市部では集合住宅も多くなっているなど、条件が異なるためこの理論を適用するにはさらに調査が必要であろう。またこの方法でコントロールする法的根拠の問題もあるだろう。



コントロール
都市計画が必要な理由は、インフラ整備コスト(税金から)の問題であったり、快適性や安全性、景観その他いろいろあるだろう。自宅の近所に風俗店があるのは子供の教育上良くないのであるが、本音ではオネエちゃんのいる店で仕事帰りに一杯やりたいのが人情であるから、それをコントロールしなければならないと言うことになりそうだ。前回書いた六本木ヒルズでも同じビル内に赤提灯があっては資産価値が落ちるし、ステイタスとはならないから困るのであろうが、やっぱり新橋のガード下のモツ鍋が落ち着くから無くさないで欲しいわけだ。そう言った本音と建前をコントロールするのも都市計画であろうか。



参考資料
「近隣住区論 新しいコミュニティ計画のために」クラレンス・A・ペリー 鹿島出版会

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