この本も都市計画学と現代建築論のために読んでいる。
この本は1929年にブエノスアイレスで行われた10回の講演内容(一部付加有り)をまとめた物の上刊である。(当然、下刊もある。)
ル・コルビュジエの都市と集合住宅と住居は全て同じ方法論の中にあるのだと、この本を読めばよくわかる。この1920年代に現在、もう21世紀であるが、ある都市に関する多くの問題点についての予言をし、さらに解決策まで出してしまっているようで興味深い。「介護や福祉」と「都市や住宅」を関連付けて考える意思のある方はこれを一読しておいても良いかも知れない。
また「現在の四角い建築が存在するのはル・コルビュジエ在ればこそ」などと言われるが、これが大きな間違いだとわかる。現在でも四角いガラス張りの立面を持つ高層ビルが多く建設されているが、これはル・コルビュジエが提唱した合理的「建設方法」だけを便利に用いているに過ぎない。狭い敷地にたくさんのフロアを積み上げる技術の結果であって、そこにル・コルビュジエの目指した物は何も反映されていない。
140ページに客船の話が出ている。
船室にはベッド、執務机、絨毯、洗面台、箪笥、鏡、電灯などが約15㎡の中に全て入っている。食事、台所は無いが、50人の調理人が2000人の乗客の食事を作っているので自分は1/40人の調理人を雇っている事になる。それで調理人の不足は緩和される。その他に20人の面倒を見ている使用人がいるのであるから1/20人の使用人を雇っていることになる。合計で1/40+1/20=3/40人雇っていることになる。
これは船の中の事であるが、これを我々の家庭生活にあてはめる。
それが「都市計画」と「現代住宅」の基礎になる原理と言及しています。
「まず、2階建ての住戸を作り、その裏側部分に1本の街路を通す。これを6m毎に重層する。」これは何の説明かと言うと「集合住宅」である。これにエレベーターを付け、屋上に庭園、体育室、プールなどを付けるのであるが、これはまさに「縦にした都市計画」と言えるものだ。街路であって廊下と言わない所に注目すべきである。
現在の高層マンションでは単に高さを重ねる事で容積をかせぎ、収益性を高くしているだけだ。外からちょっと見たところル・コルビュジエの集合住宅と変らないように見えるけれども、2者の考え方には大きな溝がある。
最近は住宅に関して「開かれた」をテーマに語られる事が多い。これは高齢化社会になって個別にその機能を充足できなくなって初めて言われ始めた事だと思う。閉じた住宅は夫婦+子供世帯ではそれなりに良かったが、子供が別居し親は高齢化して介護ヘルパーが出入りしなくては生活できない状態になった時に、地域と住宅の内部が壁で完全に仕切られた状態であるのが不合理になったと言う事だ。
もし我々日本人がル・コルビュジエのように集合住宅を造っていたならば、(お金の事ばかり考えていないで生活について真面目に取り組んでいたならば、と言い換えても良い。)現在の日本はもっと楽に高齢化社会を迎える事ができたのではないだろうか。
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