先日図書館が買ってくれた「近代建築史」を読んでみた。
この本は読み難い。
1.いちいち表現が情緒的すぎる。
「洗練」「精緻な」「完成度の高い」「独自の境地にまで達している」「ダイナミックな」「美しい」などの形容詞が多用されている。それは引用でなく本文として書かれているのだが、歴史上の建築物にこう言う情緒的な表現が許されるのはそれが業界のコンセンサスだからなのかそれとも著作物は著者のものと割り切っての事なのか。
2.建築家数人がやった事を歴史の中の一つの流れとして書いていて信用して読んで良いのか悪いのか判断がつかない。特にに最近の事象については細かく書かれているのはありがたいが、その事を「...ism」と同等に扱って書いている。最近の事なので時間が評価していない部分であるので仕方ないとも言えるが、このあたりは眉に唾をつけて読む必要がありそうだ。
3.出てくる建築物名が多すぎて写真掲載が無いものが多い。インターネットで建築物名を検索して写真を表示させながらでないと、この本は面白くないところが多いと言う事。
4.日本の建築が強調されすぎていて背景にある西洋との遠近感があいまいな印象がある。日本人の書いたものなので仕方ないと思う。日本以外のアジアにほとんど触れていないのはそこに流れが無いからなのだろうか。
5.近代における都市計画と建築単体や建築の思潮、それに歴史そのものを全て通しておおまかに眺めることができるのは本書の良いところだと思う。
例えば、近代に都市計画が必用になった背景の一つに都市化があると言われるが、これについて具体的に「仕事場と住居が離れて存在するようになったのは近代になって初めて」と書いてある。現在は仕事場まで交通機関を使って移動するのが普通であるから、その感覚で歴史上の都市計画を見ようとしてしまう読者の視点に警告を与えてくれる。これはすばらしい。
6.疑問点
「ドミノ」に関する記述(P128)の中で、
『1914年から鉄筋コンクリートの軸組と量産住宅の主題についての研究を発展させ、「ドミノ」とよばれる構造体系を考案する。』と書いてあるが、先日の雑誌"Casa BRUTUS vol.89"では「ドミノ」は木造建築のために計画されたと書いてあった。Wikipediaにも「鉄筋コンクリートによる」となっている。
これはどう言うことなのだろう。
参考資料
「近代建築史」石田潤一郎/中川理 昭和堂
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