2007/07/26

「輝く都市」 - ル・コルビュジエ

都市計画学のために読んでいるが、この内容は現在「持続可能な都市」を考える上での基礎資料としても読んでおく価値があるかも知れない。



ル・コルビュジエの考え方の中で「住宅」と「都市」は独立したものでは無い。
学問的に細分化した中に居る我々の頭脳中では、「都市計画」と言う立場からその街路などの部分だけを抜き出して考えたり、「住宅計画」と言う立場からその外部とは無関係な空間について論じる事は普通にあるものだ。

しかし、ル・コルビュジエは「都市計画」を論じる場合に人間の生活の意味での「住宅」と「住宅の延長」を定義するところから入る。

「住宅の延長」とは食料補給、家庭奉仕、保険衛生、身体保持、体質改善、学校、仕事、社交、とそれを繋ぐ交通によって定義される人間の生活に必用な全ての体系である。
「都市」はその延長上に存在するものである。



ル・コルビュジエはこの事を歴史方向からの考察によっても考える。

近代以前からの都市は、ロバや人が時速4km/hで通る「路地」の隙間に住居を構えて暮らす状況であった。産業革命以後その地に工場が出来、原材料や産品を運ぶ車がが往来するようになり、労働者や食料はその間を縫って往来する姿に変わった。つまり産業構造が変化し労働も変化したにも関わらず都市はその「廊下式通路」を変化させる事無く続いてしまった。工場はその立地を間違えたし、それを改善する計画も実行されなかった。


デカルト「自然が作り出したものと、人間精神が作り出したものとの間には一つの統一がある。」

つまり人間は、都市を「組織化」しなければならない、と考える。
組織化は都市や住居に生物学を適用する事、個々が全体の一部として完全に機能するような「調和」を目指す事である。


具体的には
まず「土地の占拠」の問題を整理する必要がある。
・行政の中心地であった従来からの同心円上にあって放射状をなす町は「商業都市」となり、商品の交換の中心となる。
・原材料の補給と商品の搬出に使われる道路に沿って工場を配置した直線状工業地帯(直線状都市)は商業都市と交差する。これらは同心円状都市の衛星都市となる。
・上記2者によって区切られた三角形地帯では農業が行われ、農民生活の容れ物となる。

都市においては時速4km/hの移動手段と時速50~100km/hの自動車が完全に分離されることで、住居や事務所となる建物が完全に機能する。
完全に機能すると言うのは「太陽」「緑」「空間」の3要素を満足する事である。
消極的な言い方をすれば、従来の都市にあった不都合「交通の混乱」「街路からの騒音やホコリ」「住居が太陽光に向いていない」「住居の周囲に緑が無い」と言う廊下式街路の制約と圧制からの開放である。


住宅は郊外に無限に広く拡散する「拡散する都市」となることなく、高さ方向に成長させ「集中する都市」。これにより住宅から仕事場まで長時間通勤する必用なく生活が可能である。

これはまた、水平方向の交通(自動車)より垂直方向の交通(エレベーター)の方が総合的に考えたエネルギー効率が良いと言うことである。




最後に、ル・コルビュジエの都市計画を「Static(静的)」であると表現する事があるようだが、これを読んだ中ではそうは感じられない。そちらの意見もどこかで読んでみる必要がありそうだ。

参考書
「輝く都市」 ル・コルビュジエ 板倉準三 訳 丸善
       (鹿島出版会のものでは無い。)

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