昨日(5月22日)、朝日新聞に戦後の公営住宅標準間取「51C」について書かれていた。たまたま図書館の書棚を眺めているとこの本が見えたので借りてみた。
結論から言うと、すごく面白い本です。
51Cの考案者である建築家の鈴木成文氏と社会学者である上野千鶴子氏の、これはまさに"戦い"の様相を呈しています。その議論の中心は現在の住宅で当たり前になっている「nLDK」と言う間取についての批判、そしてこれを半世紀も生き永らえさせているのは誰の責任であるかと言うことです。
鈴木氏
「51C」と「nLDK」の間にはその理念上隔たりがあり、全く違うもの。
「51C」は住み方調査によって得られた「食事の場と就寝の場を分ける傾向(食寝分離)」、「子供が成長すると親と寝室が分離する傾向(就寝分離)」を戦後の少ない資源を元に実現する1つの型として提案された。
「nLDK」は家電製品等が増えて自然発生的にできた公的な場「L」と住宅を商品化して売るために安易に部屋数「n」を増やしていっただけのもの。
上野氏
建築家は理念を間取として提案する「空間帝国主義者」だ。空間や間取が生活や家族を規定できる、理想(タテマエ)の方向に導こうとするが、実態(ホンネ)としての家族の有り様はそれとは随分と違っている。空間の方を実態に近づけるべきだ。
その他いろいろあって、箇条書きにしてもとても書ききれない。
最後に一つだけ加えておくと、日本が高齢者の多い社会になってきている中、人の生活スタイルとか家族の有り方を考える上で、つまり建築に関わる者にとっては住宅や街や都市を考える上で多くのヒントを与えてくれる資料だと思われる。
『「51C」家族を入れるハコの戦後と現在』鈴木成文・上野千鶴子他 平凡社
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