「都市美」と言う本について
欧米各国の「都市の美観」を中心とした都市計画についての歴史を主に書かれた本である。
都市の「美」と言った場合に、誰から見た美なのか、美とはどんな状態なのか、そのために誰がどのような事をしてきたのか、また失敗してきたのかと言うのを調べたものだある。
注目しておきたいところを数点挙げておく
1.アメリカの「ニューアーバニズム」
一つの地区を開発する時に一人の建築家やデザイナーが全てデザインするような単調さも、その反対の無秩序も良しとしない。別々の建築家が関与しながらも一定の秩序を作り出す「都市のDNAとも言える建築コード」を計画家がアウトプットするそうである。
計画家が居るにしても、多くの人が関与しながら何らかの統一感ある街を作る手法はどのようなものなのか。この本では詳細がわからないので今後調べてみたい。
2.日本にも居た活動家
「橡内吉胤(とちないよしたね)」
「石川栄耀(いしかわひであき)」
日本にも都市美活動家が居たと言う事。
現在にはその志が全く途絶えて伝わる事がなかったのは残念。
3.シャルル・ビュルス(ベルギー)の「都市の美学」(未読)
技術面に偏った都市計画に反対し、土地固有の地形や歴史的建造物を生かした独自の魅力を引き出す街づくりを行った人である。
その中で「図面上でしか確認できない左右対称の幾何学的な計画」を「歩行者の視点から認識できない」と言う理由で否定している。
これは共感できる。先日行ってみた「豊洲ららぽーと」(これは都市ではないが)では平面図をみなければ建物が船とドックの形をしているとは気付かない。最近建設されている大規模再開発などでも平面図を見なければ意図がわからないようなものがある。高層ビルにしても鳥でなければ認識できないデザインがなされているようにも思うものがある。
建築家はどう考えてそれを造るのだろうか。
仙川の安藤ストリートなどもこう言う視点から見てみたいと思うものの一つだ。
関連資料
カミロ・ジッテ(オーストリア)「芸術的原理に基づく都市計画」(未読)
この本について
「都市美を考えていく時に専門家の役割が大きい」と書いている。この本自体が専門書であるのでそれも間違いないのだろうが、戦前の都市美運動スローガン「わたしのおうちも景色のひとつ」と言う風景の公共性を忘れた日本人の中で建築家が啓蒙できるほど大きな力を持ち得るかどうか、私は疑問あり。
現在の1級建築士数32万人、2級まで合わせて101万人もいてこんな街並みしか産み出せなかったのだから。いったい専門家はどこで何をやっているのだろうと思われても仕方ないのではないか。それが今後どうすれば変ると言うのか。(黒川氏に東京都知事をお願いしたら変る?)
参考資料
「都市美 都市景観施策の源流とその展開」西村幸夫 学芸出版社
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