2007/10/25

黒川紀章から伊東豊雄を振り返って見る

黒川紀章を読んでいたら、伊東豊雄の文章が気になった。
伊東豊雄の文章に出てきた幾つかの単語が黒川紀章の定義したものだと分かったからだ。

例えば「ノイズ」。
黒川紀章はこれを、メタモルフォーシス(突然変異)のきっかけになる何かと定義している。中間領域、あいまいな場所のようなところで偶発的にその何かと出会う事で突然変異が起こる。固定した機能を持たない場所では予期せぬ何かが、偶発的な出会いによって変化する。取るに足らないと思われた何かと遭遇する。その何かをノイズと表現している。情報化社会においては情報がノイズとなる場合もあると言うことだ。

例えば「ノマド」。
黒川紀章のノマドはその名の通り「遊牧民」を指す。
人間をその生活パターンで分類すると、一般に「農業従事者」と「商工業従事者」は違うと考えがちであるが、これは同じである。決まった時間に決まった事をして生活を成り立たせているからである。
遊牧民の生活はこれとは異なる。常に遠くの敵やオアシスについてできるだけ早く情報を得、それによってパターンを変化させなければならない。決まったパターンは通用しない。これが今後の情報化社会の人間の生活パターンと似ていると言うのである。


伊東豊雄の言葉はこれを踏まえた上でのものであった。
但し、ノイズもノマドもこの定義を知った上での集約された記号のように使っている。建築用語として使っているのである。だからノイズもノマドも分かるようで分からない。


建築家や批評家の書く文章で、何時も迷惑に思うのはこの事だ。その世界の人間でないと定義が分からない業界用語になってしまっているからだ。建築関係の書籍や雑誌と言うのはほとんどがその業界の人間か、建築を学ぶ学生か、もしかしたら建築オタク(のような人間がいるのかどうか分からないが)が読むものになっている。一般人が読んで楽しいものでは全く無い。

だからこそ、こう言うわからない言葉が通用するのだろう。建築を学ぶ学生はそういった特殊な世界に憧れて一所懸命に単語を覚えて、早くこう言った小難しい議論に参加したいと願うのかも知れない。(何と従順なのだろう。)



その点、黒川紀章の言葉にはそういった業界用語が少ない。多分建築家の中にあって極端に少ないのではないか。なぜなら彼はその言葉を定義しながら作る立場であろうとしたからかも知れない。だから黒川紀章の文章は読み易い。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

時間があるってうらやましいですな
ちっとも本を読めないので 焦ります。

orang-u さんのコメント...

人生でいちばん必要なものは時間ですね。去年まではこの時間を得るためにちょっと多めに働きました。それと愛妻の理解あってこそです。

匿名 さんのコメント...

本当に時間は貴重ですな。ああ学生時代は無駄な時間を費やしていたなあと思います。