現代建築論の中で伊東豊雄の建築について考えている。
1.都市の捉え方
・絶えず変化する。
・流れの中にある。
・秩序無く造られては壊される。
・いろいろな印がCOPYされ消費され続けている。
・コラージュされている。
・表面的である。
2.都市の中の人間
・情報を消費する存在。
-ブランドのバッグは物としてもバッグで無く印としてのバッグ。
・情報の中の遊牧民。
-印、情報は絶対的ではなく何時か流れていってしまう。固定的でない。
・物理的な肉体と情報的な肉体の両方を持つ者。
3.都市の中での建築の位置付け
・建築は形態的にも機能的にも完結し、独立したものではあり得ない。
・建築は流と相対的な関係を持つ渦のような「現象的」存在。
-固定化された物である建築と都市の在り方とのギャップに対して。
・古典的な都市の枠組から見る建築の否定
-「都市はこうあるべき」からの建築は不可能である。
4.伊東豊雄の建築の理念
・仮想的
-流れ、変化に対して固定的でない事。
・ニュートラル
-流れ、変化に対して中立であり可変である事。
・メディア
-情報の入れ物である事。情報の変化とともに変化するモニュメンタリティ。
-従来の建築は固定的で時代の変化の中でも意味が変らない事に対する。
・建築のプリミティブ(原初的)で自然な状態の模索。
5.伊東豊雄の建築の表現方法
・グラフィカルなエレメントで構成する。
-柱、梁などの機能エレメントで構成しない。
・コラージュ
-都市(東京)の論理
6.新しい方法論
・人々の動物本能に訴えかけるもの
・自然界の構成原理に近づく
・運動体の幾何学のルールに基づく
・新しいシンボル性を持つ
・新しい装飾を発見する
所感など
従来建築(近代、ポストモダン)の枠組の挫折
近代もその後の建築も幾何学的秩序のある都市の理想像を基に建築を造ってきたと考えれば、
19世紀以前と変わり無いと言える。現在の都市の実態を見ればそれは既に挫折していると見て間違いはないだろう。都市は(東京は)無秩序なまま造られ続けていて何の抑制も無い。
それまでの建築は固定的で永遠性を体現する事を目標に造られた。しかし現代の建築は社会や都市の変化の中で変化する事を要求される。しかし形態を固定化をする建築はそれに応えられずギャップは広がるばかりである。ここに建築は挫折したのである。
伊東豊雄の建築はそんな挫折の時代に産まれた。
都市における人間の生活も変化した。生活は固定的でなく、出現しては流れていく情報(伊藤はノイズと表現する)の中にある印を求めて行動するようになった。人は物としての建築に集まるのではなく、情報の発信源に集まる。建築はメディア(情報の入れ物)化しなければ存在できないと伊東は考えたのであろう。
故に従来建築の重さからフリーな軽くて変化するものであろうとした。そして前時代に用いられた普遍の美からも自由となろうとする過程で、自然の中の原初的な美、うつろい行く幾何学の美、そういった形態を採用することになる。
(ル・コルビュジエなどの近代の元祖的建築家は普遍の美を採用してはいた。しかし彼らが主張したのは"自由"であって、その四角さを言ったのでは無い。四角さを言ったのではなく、ギリシャ・ローマを言わなかったと解釈すべきではないか。この先人の解釈の誤りを受け入れながら、それを否定していると思われる。)
造形表現では樹木などの自然の形態、動く幾何学の形態を用いている。しかしそれはあくまでも「形」の再現においてであり、ガウディのように自然現象の力学的引用までは行っていない。力学的には建築技術の力学であり、造形表現との関連は薄い。つまり「造花」を造っているのではないだろうか。
またある意味、伊東建築は新しいメタボリズムの表現であるとも受け取れる。伊東の建築はメディアと言う入れ物であり、内容物は情報のようなソフトウェアであると捉える事で固定したものとして想定はしない。固定してプランニングする事への「諦(あきら)め」であるとも感じられる。
参考資料
「風の変様体 建築クロニクル」伊東豊雄 青土社
「建築を考える」菊竹清訓 鹿島出版会
「シミュレイテド・シティの建築」伊東豊雄 INAX
「伊東豊雄/ライト・ストラクチャのディテール」伊東豊雄建築設計事務所 彰国社
「<現代の建築家>伊東豊雄-風の変様体-」鹿島出版会
「自ずと生まれる生きものが暮らす空間(対談)」生命誌ジャーナル2007年秋号
「伊東豊雄 建築|新しいリアル(パンフレット)」神奈川県立近代美術館 葉山
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