中古引っ越してた後にすべきことはいろいろある。
マレーシアの団地に引っ越してきた。ベッドもエアコンもテレビもシーリングファンも冷蔵庫も洗濯機もコンロも収納棚も一通り揃っていたので、後はトイレットペーパーや洗剤やシーツや枕やハンガーや食品や食器などの細々とした物だけ買って来れば住める。状況としてはそれで全く間違いはない。
ただ、中古物件と言うものは以前に誰かが住んでいたものであるからタイルの目地は真っ白ではないし、天井裏が多少カビ臭かったり水道の蛇口のメッキが薄くなっていたり水滴の痕もあり壁に鋲の痕やシミがあったり便座の表面は磨いた細かい傷で満たされている。そして何か得体の知れない臭いも残されているものだ。
住み始めた後は徐々にその部屋を使いながら他人の臭いを追い出しつつ自らの臭いでそこを満たしていくことになる。ドアの取っ手には自分の指紋が配水管には自分の皮脂と石鹸の混ざった滓がこびり付くだろう。壁のスイッチ周りは手垢で黒ずみ床にの隅には抜けた髪の毛が溜まる。そうして同じことの繰り返し。誰かの手垢に他人の手垢が重なり住宅は歳を重ねていく。
それは自然だ。
だが、愛妻さんはどうもそれを好まない。キッチン収納の扉を開けた時のちょっとした臭いやトイレの芳香剤と汚物の混ざった臭いほんのちょっとのカビ臭さを嫌う。収納棚にうっすらとあるシミや埃を嫌う。床タイルの目地の取れない黒ずみを嫌う。前に済んでいた誰かの残した全ての証拠を嫌う。人間のいた痕跡の全てを嫌う。残された食器はきれいであっても全て処分して新しい物を買う。キッチンで使うものは量産された新品のプラスチック製品を買う。人間の残した臭いを追い出すために化学薬品を充満させる。棚の中には発泡スチレンの防虫シートとプラスチックの容器で整理する。これは棚板に服が直接触れないためだ。こうした小さな努力によって誰かが触れたはずの部分に自分の身体や身に付ける物が触れなくて済むようにしているようなのだ。
彼女はたぶん一般的な日本の人である。こうした姿を見ていると我々日本人は中古住宅に住むことはできないのだろうと感じられる。いくら耐用年数の長いストックとしての住宅を造っても新しい住宅を選ぶのだろうし、万一中古を選んでもそれは予算の問題かテンポラリな用途として考えているためだけなのかも知れない。(調査に基づいて言っているのではない。)最近テレビでよく紹介される団地やマンションを再生する試みでも構造体以外の部分を全て新品に換えてしまって、つまりは以前に住んでいた他人の臭いも手垢も全て取り除くかそう言ったものに触れなくて済むようにほんのちょっと浮き上がった位置に住まわせる工夫が成されている。
日本人にとって住まいに歴史は不要なのだ。
3 件のコメント:
こんにちは お久しぶりです
さすがですね
マレーシアに移住なさっていたとは
すばらしいです
住み始めた後は徐々にその部屋を使いながら他人の臭いを追い出しつつ自らの臭いでそこを満たしていくことになる。
この文章はすばらしい
壮絶なおいにいバトルが繰り広げられそうですな
マレーシアなど東南アジア独特の
強烈な暑さとにおいに勝つには
何かとガッツが必要ですね
それでは
水に気をつけて頑張ってください
私も頑張らねば!
スラマトジャラン
まんきー ジャランカキ まんきー
まんきーさん
マレーシアはもう先進国入りが射程内だと思っている国だから他の東南アジアとは事情がかなり違いますよ。人間の臭いが嫌いなのは日本でも同じじゃありませんか。
なるほどマレーシアでも一部はそのようですな
奥さんは、私と同じA型気質とみた
もし私なら
人糞のおいにいが住まいに漂っていたら
ウルトラマンではないが、3分で発狂離脱しますでしょう
おそらくオラングさんはO型気質
おそらく免疫力が強いO型ならではの気にしなさが
東南アジアの過酷な衛生環境では必要なのでしょうな
おいにいに関しては、気づかないうちに順応しているはずですが、くれぐれも衛生面にはお気を付け下さい
いやあこれから地球環境が悪化する時代 ますますオラングさんのような免疫力が重要ですなあ
ではまた!
マンキー IGm マンキー
コメントを投稿